家のこと(新築)
2022.7.25. MON
認知症の家族と介護する家族を支える家づくりの工夫5つ!みんなに優しい家づくりをするメリットは?
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そもそも認知症って?
認知症とは、脳の病気や障害などにより、複数の認知機能が低下している状態のことを言います。
この「認知機能」というのは、
・記憶
・理解
・言語
・集中
などの機能のことを指し、これらが低下することで普通の生活に支障をきたすような状態のことを「認知症」と言います。
高齢化社会に突入している日本にとっては、この認知症というのは決して避けては通れないことですよね。
もし自分の家族や身近な人が認知症を発症してしまったら、皆さんはどのように付き合っていくでしょうか。
ご存知の通り、認知症は介護される側も介護する側もつらい病気。
双方に多くの負担がかかると言われています。
その負担を少しでも解消することができたら、どんなに楽なんだろう…と思いますよね。
そこで今回は、認知症の家族にも介護する家族にも優しい家づくりの工夫についてご紹介します。
認知症は5人に1人がかかる病気
日本では年々深刻な問題となっている少子高齢化社会。
その中で認知症という病は、とてもポピュラーなものとなりました。
厚生労働省によれば(※)、65歳以上の認知症は2020年度時点でおよそ600万人。
2025年には、700万人以上(5人に1人の割合)と言われており、決して珍しい病気ではありません。
まだ自分も親も元気だから…と他人事のように捉えている方も多いかもしれませんが、いつ認知症が発症するのかは誰にも予測できないこと。
誰もが起こるような病気だという認識は常に持っておいたが方が良さそうですね。
※参考資料:厚生労働省HP「みんなのメンタルヘルス」より
認知症の症状は?
認知症の症状は、初期~中期、後期へと段階を経て進行していきます。
最初は物忘れだけだったのが、徐々に進行していき、いつのまにか普段通りの生活が送れなくなってしまうこともあるんです。
当の本人はもちろん、そばで見守る家族も進行していく病と闘うことは不安や恐怖を抱くでしょう。
認知症は、早期発見をし適切な対処を行うことで進行を遅らせることができるそうですから、もしかして「認知症かも?」という疑いがあった場合は、早めの診断を受けることをおすすめします。
~初期症状~
・物忘れの頻度が多くなる
・言葉を話すのが難しくなる(うまく言葉が出てこないなど)
・これまでできていた簡単な機械の操作ができなくなる(テレビやエアコンの操作など)
~中期から後期症状~
・徘徊
・昼夜逆転
・物を盗られたなどという妄想
・同じ話を何度もしたり同じ物を何個も購入したりする
・慣れた道なのに迷う
・曜日や日付がわからない
・仕事や家事の段取りがわからなくなる
・食事やトイレなど身の回りのことができなくなる
・うつ症状が出る
・暴言や暴力を振るうようになる
・家族の顔や親しい人がわからなくなる
など。
初期段階では、本人の自覚があるそうですが、徐々に病気が進行していくと、まるで自分が自分でないような…そんな気分になってしまうのが認知症なので、本人のストレスは計り知れないものだと思います。
もちろん、その家族を支える周りの人たちも苦労が絶えないですね。
他人事ではない病気だからこそ、認知症への理解を深め、認知症になった家族へ寄り添う気持ちを持つことが大切かもしれません。
認知症は自宅療養がほとんど!家族の負担を減らすために家づくりの工夫をしよう
認知症はこれまでご紹介したように、物忘れから始まって、最終的には排泄や食事などといった生活もできなくなってしまいます。
ですが、ほかの病気とは異なり、症状が進行しても基本的には自宅療養することが多いため、思わぬ事故やトラブルが起こらないよう、家づくりの工夫をすることも必要です。
しかし、この家づくりの工夫は、認知症が発症してからでは遅いんです!
というのも、家づくりというのは、手続きや工事に時間を要しますから、体調の変化が著しい認知症の家族を抱えながら行うのは大変なこと。
特に認知症の方は、環境の変化を嫌いますから、建築中の仮住まい生活で症状が悪化してしまうこともあるんですよ。
いまや5人に1人がかかると言われる認知症ですから、まだ家族が元気であるうちに、将来を見据えた家づくりをすることが必要なんですね。
認知症の家族と介護する家族を支える家づくりの5つの工夫
では具体的にどのような家が、認知症の家族にとって暮らしやすいのでしょうか?
そして、認知症患者を介護する家族にも負担がなく暮らせる家づくりができるのでしょうか?
以下を参考に、認知症の家族や介護する家族に優しい家づくりについて考えてみてくださいね。
【ポイント①転倒・転落のリスクをなくす】
認知症の方は、段差や階段などを認識することができません。
そこにあるはずの階段や段差も認識できず、つまずいて転んでしまうことがよくあります。
階段であれば、転落の恐れもあり大変危険ですね。
万が一、認知症の方が転倒や転落事故を起こしてしまうと、そのまま寝たきりになり、さらに認知症の症状が進行してしまう恐れもあります。
ですから、家づくりの際はなるべく段差をつくらない工夫が必要なんです。
・不用意な段差をつくらずバリアフリーにする
・ラグやマットは置かない
・階段にはベビーゲートなどを設置する
・廊下や階段には手すりを設ける
・足元を照らすフロアライトを設置する
などの対策を講じましょう。
ベビーゲートを設置したり、フロアライトを設置したりすることは後からでも簡単にできますが、バリアフリー住宅にするには工事の時間と費用がかかります。
最初の家づくりの段階で行っておくと、二度手間にならずに済みますね。
また、よくあるのが足元が冷えるから…とスリッパを履く行為。
スリッパは転倒のリスクが上がりますから、冬場でも足元が冷えないよう断熱性や気密性に優れた家づくりをすることも大切ですよ。
【ポイント②1階にユーティリティスペースを設ける】
認知症の家族がいても介護しやすいよう、家づくりの際はあらかじめ1階部分に自由度の高い「ユーティリティスペース」を設けておくと便利です。
子育て中は子どもの遊び場として、ちょっとした荷物置き場にして活用してもいいでしょう。
将来的には、認知症の家族やその他の理由から介護が必要なケースが出た場合に、介護用ベッドを設置できるスペースとして余裕のある空間を設けておくのがおすすめです。
なぜ1階部分なの?…というと、それは認知症の家族の転倒や転落のリスクを回避するためです。
1階部分であれば、認知症の患者を支える家族の負担も軽減されますよね。
家族を支えながら階段の昇り降りは大変なので、極力1階スペースに設けるようにしましょう。
【ポイント③社会的交流がしやすい家づくりをする】
冒頭でもご紹介したように、認知症の方の多くは、自分が自分ではなくなってしまうという恐怖や不安を常に抱いていると言われており、そのつらさを誰にも理解してもらえず、孤立してしまっていると感じるケースが多いのだそうです。
たとえば、これまでバリバリ仕事や趣味を楽しんでいた人が、急に物忘れがひどくなってしまった場合。
恥ずかしさや不安から、外出したり人と会ったりするのが怖くなってしまうこともありますね。
もっといえば、家族の顔さえもわからなくなり、「一緒に暮らしている人は誰?」と思ってしまうこともあるのだとか。
このように病状が進んでいくにつれ、体を動かしたり誰かと会話したりする機会が極端に減ってしまいます。
すると、ますます認知症が悪化してしまうのです。
こうしたことを防ぐためにも、社会的交流がしやすい家づくりをすることも大切なんですよ。
具体的に言うと、
・外出しやすいよう玄関の段差をなくす
・廊下や玄関に手すりをつける
・靴を脱ぎ履きしやすい椅子を玄関に設ける
・車椅子でも移動しやすいような広々とした玄関にする
など。
たまには外の空気を吸い、体を動かすことで軽度の認知症の進行を遅らせることもできるかもしれませんね。
【ポイント④居心地の良いスポットを用意する】
認知症の家族が心地よく過ごせるスポットを家の中に用意するのもおすすめです。
布団やベッドではなく、ホッと一息つける場所があるといいでしょう。
たとえば、想い出の木を眺められる縁側にリクライニングチェアを設けたり、お部屋の窓に四季の移り変わりを感じられる大きなピクチャーウィンドウを設けたり…。
心が落ち着ける空間があると、認知症の家族の心のケアにもつながるでしょう。
【ポイント⑤ヒートショックを防ぐ断熱性気密性の高い家づくりをする】
認知症の家族だけに限ったことではありませんが、特に高齢者に多いとされるヒートショックを防ぐ家づくりをするのも1つの工夫です。
ヒートショックは、部屋と部屋との温度差が激しいことで起こる健康被害で、急激な血圧の変化が心臓発作や脳卒中などを引き起こすと言われています。
このヒートショックで亡くなる人は交通事故で亡くなる人よりもはるかに多いと言われており、高齢化社会においてはヒートショックを予防する家づくりが必要不可欠になっているんです。
ヒートショックを予防するためには、
・断熱性の高い建材を使う
・床や屋根、壁などに断熱施工をする
・断熱性の高い樹脂窓とLow-E複層ガラスを使用する
などの工夫をしましょう。
認知症の家族に優しい家づくりをするメリットは?
認知症の家族に優しい家づくりをするということは、これまでご紹介したような段差をなくしたり、玄関を広くしたりするなどの工夫が必要です。
しかしこれには費用がかかりますよね。
それでも、認知症の家族に優しい家づくりをした方がよいメリットはあるのでしょうか?
【メリット①家の快適さが上がる】
認知症の家族のために…と考えた家づくりは、結果として「家の快適さ」そのものを向上させることにつながります。
たとえば、ヒートショック予防のために断熱性・気密性を上げることは、高齢者に限らず誰もが快適に感じますよね。
夏は涼しく冬は暖かく過ごせる室内は、誰にとっても心地良いはずです。
【メリット②認知症の進行を遅らせることができるかもしれない】
認知症のように生活に支障をきたすほどではないのですが、記憶力が著しく低下し、正常とも認知症とも言えないような状態を軽度認知障害(MCI)と言います。
軽度認知障害だからと言ってすべてが認知症の疑いがあるわけではありませんが、およそ半数は、約5年以内に認知症に移行すると言われています。
しかし、日ごろから体を適度に動かしたり誰かと会話をしたりするなど予防的活動を行うことで認知症の進行を遅らせられるかもしれないと言われているので、認知症予備軍である家族が動きやすい環境を作ってあげることも必要なのです。
【メリット③家族みんなが暮らしやすくなる】
高気密高断熱な家づくりやバリアフリーな家づくりというのは、認知症の家族だけにメリットがあるわけではありません。
実は、子育て中のママや妊婦さんにとっても暮らしやすくなるんですよ。
段差がないことで小さな子ども安全に歩き回れますし、お腹の大きな妊婦さんも転倒リスクが減りますね。
このように認知症の家族に優しい家づくりは、認知症の家族を介護するという遠い未来の話だけではなく、今この瞬間も家族みんなが笑顔になれる家づくりになっているんです。
認知症の家族に優しい家づくりをする際の注意点
認知症の家族に優しい家づくりをする際は、以下の点に注意し、負担のかからないよう配慮しましょう。
【注意点①将来を見据えて早めに行動する】
先ほども少し触れましたが、家族が認知症を発症してから暮らしやすい家づくりをするのでは少し遅いんですよね。
建て替えや新築では、どんなに早くても半年はかかります。
土地から探そうと思えば、1年以上かかることは珍しいことではありません。
ですから、30~40代のころに家づくりをするときに、将来を見据え、老後の生活も暮らしやすいような間取りにしておくといいでしょう。
招来を見据えた早めの行動が、後々大きな満足度につながると思います。
【注意点②リフォームの際は劇的な変化は控える】
新築や建て替えではなく、いまある既存の住宅をリフォームする場合も、劇的変化はなるべく控えるようにしましょう。
認知症の方にとって、大きな変化は心の負担になってしまうことがあります。
「ここはどこ?」と自分の家ではないような、不安感や恐怖心を抱き、パニックになってしまうこともあるそうです。
そもそも認知症の家族の介護があるからリフォームをするのではなく、今より快適な暮らしをしたいからリフォームをする…というような考え方にしておくことが理想的です。
認知症は身近な病気!いつか訪れる未来のために快適な家づくりを考えよう
冒頭でもご紹介したとおり、5人に1人の割合で起こる認知症。
それは10年先にやってくるのか、20年先なのか、誰にも予測することはできません。しかしいずれ訪れるであろう老後の生活。
今はあまりイメージしにくいかもしれませんが、将来も暮らしやすい家にするために今から準備をしておくことが大切なんですよ。
私たち無添加計画では、安全持続性能の高い家づくりを推奨しています。
高齢者のみならず子育て世帯にとってもメリットの大きいバリアフリーな家づくりや、介護ベッドの設置も考えたユーティリティスペースの確保など様々なご提案をさせていただきます。
もちろん、新築だけでなく安全持続性能を向上させるリフォーム(またはリノベーション)もご相談可能です。
どの家族もみんな笑顔で過ごせる家づくり。
100年先の未来を見据えて、今から準備をしませんか?
ご興味のある方は是非一度私たちにご相談ください。
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