仕 様
家のこと(新築)
2021.12.07. TUE
シロアリ駆除に効果的な「ホウ酸」
NEW
木造住宅の大敵「シロアリ」
木造住宅を劣化させる原因の1つ「シロアリ」。建築基準法においても、木造住宅では防蟻処理をすることが義務付けられています。
シロアリによる被害は、私たちの目に見えない場所で進行していくため、気づかないうちにどんどん蝕まれ、建物そのものに傷が付いたり歪んだりしてしまうことも。
気づいたころには大変なことになっていた!ということもあるので、シロアリの被害は決して侮ってはいけないのです。
特に最近の日本では、外来種である「アメリカカンザイシロアリ」の被害が深刻化しています。
厄介なアメリカカンザイシロアリ
アメリカカンザイシロアリは、乾いた木材のわずかな水分でも生きていけるシロアリです。
輸入された家具や木材に付着していたのがきっかけで、日本に入ってきてしまったと考えられています。
これまで日本にいたヤマトシロアリとは異なり、基礎以外から飛来してくるのがアメリカカンザイシロアリの嫌なところ。
1階床下のみならず、2階や屋根などあらゆるところから侵入し、木材にどんどん巣穴を作って食い荒らしていきます。
これまでは床下だけで良かった防蟻処理も、アメリカカンザイシロアリの生息拡大によって、床下だけでは不十分になったというわけです。
新たな防蟻剤として選ばれた「ホウ酸」
このアメリカカンザイシロアリに対して行う駆除剤として有効なのが「ホウ酸」。
ホウ酸というと、ゴキブリ駆除で有名な「ホウ酸団子」をイメージされる方も多いのではないでしょうか。
ホウ酸とは、ホウ酸塩鉱物を精製してつくられた自然由来の成分です。
シロアリやゴキブリに対して強い威力を発揮する…と聞くと、ホウ酸=毒性が強いと勘違いされがちですが、実はホウ酸というのは、私たちの生活の中で身近に存在しています。
たとえば、洗剤や目薬、コンタクトの保存液など。つまり、それほどホウ酸は、私たち人間には害のない“安全なもの”なのです。
ホウ酸はなぜ人には安全で害虫には有害なの?
食塩の6倍と言われるホウ酸の安全性。
ではなぜ、私たちの体には無害なのに、シロアリやゴキブリには効果があるのでしょうか?
哺乳類がホウ酸を摂取すると…?
私たち人間をはじめとする哺乳類がホウ酸を摂取すると、腎臓の機能により浄化され、短時間で体外に排出されます。
そのため、基本的には無害です。
害虫駆除剤として使用しても人体に影響がないので、安心して使えます。
ただし、当然ながら大量に摂取すれば健康に害を及ぼします。これはどんな食べ物・飲み物でも同じことが言えますので、ホウ酸だからと心配し過ぎることはありません。
シロアリがホウ酸を摂取すると…?
ではシロアリやゴキブリなど、腎臓を持たない生物がホウ酸を摂取するとどうなるのでしょうか?
腎臓を持たないシロアリやゴキブリは、ホウ酸を摂取しても代謝することができず体外に排出することができません。
そのため、巣に戻って死滅してしまいます。
さらに、ホウ酸を摂取したシロアリやゴキブリがフンをした場合、それを食べた仲間も死滅。これにより、まとめて巣ごと駆除することができるんです。
ちなみに、免疫を獲得することができないため、ホウ酸を繰り返し使用したとしても効果は落ちないと言われています。
ホウ酸をシロアリ駆除に使うメリット
日本の住宅ではこれまで、農薬を使った防蟻処理が行われていましたが、近年、このホウ酸を使ったシロアリ対策をする会社が増えています。
シロアリ駆除にホウ酸を使用するメリットについてみていきましょう。
メリット①人体に影響がないため安心して使える
先述したように、ホウ酸そのものは人体に影響はありません。
安全性が高いため、床下だけでなく構造材の外周部すべてに防蟻処理を施すことができます。
これならどこからともなく侵入してくるアメリカカンザイシロアリにも効果を発揮してくれますね。
ちなみに、ホウ酸は犬や猫などペットのいるご家庭でも安心して使用することができます。
メリット②効果が長続きする
農薬は3~5年で効果が衰えると言われていますが、ホウ酸は揮発しにくい性質なため、劣化しにくく、効果が長続きすると言われています。
薬品を何度も塗り直すことが不可能な壁体内などの処理におすすめです。
メリット③浸透性が高い
ホウ酸は、木材に含まれるわずかな水分に染み込みやすいと言われています。
浸透性が高いということは、その分効果も長続きするということです。
長期間住み続けてもシロアリ被害のリスクを減らすことができます。
ホウ酸をシロアリ駆除で使うデメリット
ホウ酸についてのデメリットも知っておきましょう。
ホウ酸は水溶性なので、地面についたり、雨に濡れたりする屋外では本来の効果を十分に発揮することができません。
そのため、屋外にある杭や柵などの防蟻処理には不向きです。
ホウ酸施工が適しているのは、柱や家具、構造材などでということを覚えておきましょう。
ホウ酸が持つシロアリ以外の効果とは?
ホウ酸はこれまでご紹介したように、シロアリやゴキブリ駆除に効果がありますが、それ以外にも、以下のようなことに効果があります。
木材の防腐効果がある
実はホウ酸には、防虫効果だけでなく、木材の防腐効果も期待できます。
防腐・防虫効果が高いホウ酸は、木造住宅の最大の弱点である「木材の腐りによる劣化」も予防してくれます。
シロアリ以外にもキクイムシに効果的
ホウ酸は、シロアリやゴキブリ以外にも、キクイムシという虫にも効果を発揮してくれます。
ヒラタキクイムシとは、ラワン材、ナラ材、ケヤキ材などを好んで食べる害虫です。
特に被害が多いのがこれらを使った無垢のフローリングや家具など。
被害に遭った木材を気づかないうちに建材として使用し、建物に持ち込んでしまうケースが多いのだとか。
この厄介なヒラタキクイムシにも、ホウ酸は効果を発揮してくれるので、防蟻処理として施すことが有効です。
このように、ホウ酸は、腎臓機能を持たない虫に効果があるので、それを覚えておくと害虫駆除に役立つかもしれませんね。
ホウ酸で安心安全なシロアリ対策をしよう
シロアリ駆除に使用されるホウ酸。
いかに人体に安全で、シロアリ駆除に効果があるかが分かりましたよね。
シロアリ対策をしっかりと行っていないと、耐震性も衰えてしまい、家族の安全を守ることができません。それだけ防蟻処理というのは重要なのです。
私たち無添加計画でも、今回ご紹介したホウ酸による防蟻処理を行っています。
アメリカカンザイシロアリに対応すべく、従来の基礎から1m上までの防蟻処理に加えて、構造材の外周部すべてに防蟻処理を施しています。
安心安全な家づくりのために欠かせないホウ酸を使用した防蟻処理。
木造住宅を建てる際は、このような防蟻処理の方法についても理解を深めておきましょう。
COLUMN
他の記事も見る